2013/05/18

トロイダルトランス

トロイダルトランスは古くから、トランスとして最も理想的な構造であるといわれつつ、その構造から量産に向かない為、古くから陰に隠れた存在であった。

まさにドーナッツ形状の磁性体コアにコイルを巻き付ける構造で、輪の中にコイルを巻くという難構造から特性は優れているのだが、製造コストが高く、一部どうしてもこれでなくては?とかいわゆる製品が高価になっても費用対効果が許される、高級オーディオ機器にのみ普及した。
また、誘導などが少ないなどの特性から、医療機器の電源回路では指定パーツとして規格定義されるなどで、特殊環境業界のおなじみパーツ感が強かった。
 1980年代「無線と実験」で金田という回路デザイナーがこのトロイダルトランスを使ったアンプを紙面で発表した所、業界社会現象になった。

ところで、もっとも、商業的に成功した構造が EI構造タイプのトランスで、予めコイルと
磁性体(鉄心)コアなのだが、量産には向くが、特性的にはトロイダルが5段階評価で5だとして、それに比べ5段階評価で2−3といった感じ
 
EI構造の鉄心自体は実際は1mm以下のうす鉄を必要な形状にプレス抜きした物を必要枚数重ねて、ニスやロウ質体等で固めて形成した物で、特殊な機械で、高速にコイルが巻かれ、一瞬で出来上がる物である。日本の高度成長期の縁の下を支えた、産業技術である。
できあがったコイルを先に組み立てた鉄心のEの形状に差し込み、さらに  鉄心Iで挟み込み多くはバンドで締め付け完成となる。

 このいい所取りの構造にカットコアという構造もある。
ドーナッツ構造の O型のコアを一旦高圧プレスまたは、レーザーカッターで切断して、2分割するといっt方法で、EIトランスの欠点を最小限にとどめる手法でかつ、量産に向く構造である。
これも高級オーディオなどでは多く使われた。

トロイダルトランスの最大の利点は小型化が可能な点にある。
一般的なEIトランスに比べ同じ大きさなら、大幅に大容量の電力をカバー出来る事と
その際のトランス自体から誘発するハムノイズなどが非常に少ない点が優れている。
同容量で動作時に EIトランスなら、ブーンと耳を近づけると唸り音がするが、トロイダルではそんな事はまずありません。

さてオーディオ業界では珍しくもないこのトロイダルですが、私の勤め先のパチンコ業界で
フィバー台の普及でどんどんパチンコ台の容量が増え、それまでのEIトランスでは大型で収納が出来ないとか重くて支障があるとの要望で、困っていた時に、私の趣味の延長で「高いけど」トロイダルは?との意見で、試作を作ろうと、埼玉のメーカーでサンプルを作った所、大反響、結果、現在パチンコ店の電源はほぼ100%がトロイダルトランスになったという経緯がある。その時の仕様が、
1時側100A>2時側 AC24Vで出来るだけ大容量(希望は 1800W=1.8KW)というもので制作可能という事で、数個発注。
即現場に設置、現場での反響は大きく、それまでの1000Wクラスのトランスサイズで2倍近い容量と大変好評となった。
メーカーからは表彰状の1枚ももらってはいないけどね!

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